日本の住宅価格が高い理由と規制緩和

住宅が高いのは、業界の企画が統一されていないのが原因!!

欠陥住宅を確認

 

 

少し古い資料ですが、2008年に国土交通省が行った興味深い調査があります。アメリカと日本で同一水準の住宅を建てた場合の価格の比較データです。床面積164平方メートル(約50坪)の住宅をアメリカ(シアトル)で建てた場合の建設費は139,500ドルです。当時のレートで、日本円に換算すると約1550万円となります。だいたい坪30万円で家が建つ計算になります。比較するまでもなく「安い」と感じられる金額ではないでしょうか。

 

それでは、これと同じ仕様、同じ設備の住宅を日本で建てたらどうなるのでしょうか。名古屋市に建設した場合で約2850万円かかるというのです。アメリカのほぼ1.9倍、二倍近い金額になるのです。東京や首都圏に建てたならば、この価格差はもっと広がるのです。北米では1平方メートルにつき10万円前後で住宅が建てられるといわれています。わが国なら、少なくともこの2~3倍以上です。いや建設費はアメリカの5~7倍というのが現実に近い数字でしょう。しかも、どちらも土地代を別にしての話です。

 

 

日本の住宅が高い理由【業界としての規格が統一されていない】

住宅価格が高い

できることなら、太平洋を越えて移住したくなるような価格差ではないでしょうか。日本の住宅コストがこうも高いのには様々な理由がからみあっているのです。まず住宅業界が産業形態として「規格化」しにくい構造を持っていることが根底にあります。生産システムやルール、規格、工法、資材、設計、積算にいたるまで、住宅建築の要素が関係団体やハウスメーカーごとにまちまちであり、業界として整合性や統一性に欠けているのです。注文住宅の場合、契約ごとに値段が設定されますし、建売りやプレハブ住宅にしても、資材の単価にせよ、職人の労賃にせよ、他の経費にせよ、業者ごとに価格の差が非常に激しいうえ価格決定のメカニズムが外からはまったく見えにくい構造になっています。住宅は電気製品や自動車産業とは異なり、工場で生産できる商品ではない。その地域と切り離せない、いわば「土着型」の商品といえるのです。そのため車や家電のように規格品として大量生産しにくい特性があります。ということは価格も統一して決めにくい、換言すれば生産側の事情や思惑でプライスメータしやすい商品ということになるのです。このように、住宅産業は大手ハウスメーカー主導によって、価格を恣意的に決めやすい構造になっているのが実状です。

 

さらに、重層下請け構造や複雑な流通構造がこの高コストに拍車をかけているのです。住宅会社-建築業者-部分ごとの専門工事会社(基礎工事、電気工事、水道設備、ガスエ事、塗装工事、タイルエ事など)-工事の親方-職人という具合に、下請け構造は多層なピラミッド状になっています。この各段階ごとに経費と利潤を転嫁していけば、最終価格は高くならざるをえないのです。また住宅に使われる部品や建材の数も非常に膨大で、一軒につき15,000点にものぼるのです。これを多くの業者が現場に運び、組み立てる。その組み立てにも30~50以上もの業種がかかわるのです。いかに住宅という商品に多くの材料、多くの人、多くのプロセスが必要になるかがおわかりいただけたでしょうか。まず、この複雑で多層的なコスト膨脹構造を少しでも単純化する努力をしないと、日本の住宅価格は安くならないのです。

 

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規制緩和は進んだけれど・・・住宅価格は・・・

それでも少しずつ住宅業界にも規制緩和の波が流れ込んできています。最近目立ってきた木三共と呼ばれる木造の三階建て共同住宅や地下室付きの住宅、蔵のある家などと名づけられた屋根裏部屋のある住宅などは、規制緩和によって生まれたものです。少し前までは、造ることができなかったものです。しかし、政治資金規制法、売春防止法と並んで三大ザル法といわれる建築基準法による建築規制、あるいは設備や材料規定など、高コストにつながる規制はまだ多く残っているのが実状です。たとえば「悪名高い」ものに電気、ガス、水道などの設備工事の規制があります。指定工事店制度といって、安全性重視の理由から施工業者の資格が定められ、給排水やガス工事などは地域自治体が指定した業者しか行うことができないことになっているのです。いわば指定業者の寡占状態にあり、これが設備費をコストダウンできない大きな要因になっているのです。また水道の蛇口なども決められた製品しか使用できないなど、設備器具についての規定も「なぜ、そんなところまで」と首をかしげたくなるほど実に細かく多岐にわたるのです。これもまた、日本の住宅価格を高騰させているのです。

 

住宅に対する規制は本来、設備や資材など「仕様」にかかわる規定を細かく設けるのではなく、安全性、つまり住宅の「性能」についてより厳密に行われるべきであると私は考えます。現在の規制のあり方は重心のおき方が逆なのです。このような声が届いたのか、行政もやっと住宅に関する規制緩和に本腰を入れ始めたのです。

 

規制内容を仕様から性能規定中心に改める
2×4工法住宅の性能や技術水準率きちんと規定する
給水やガスの工事業者規制の「抜本的な」見直し
海外の資材や部品の規格を国際水準にあわせる
輸入住宅建設の従事する外国人技能者の入国迅速化

 

 

住宅業界に潜む課題の山

住宅業界の問題

 

住宅業界の問題点の一つは、工業製品をつくる製造業の産業としての安定感が、工業製品の価格に対する信頼の背景にあるのではないでしょうか。製造業は明治期の産業革命以降とはいえ、産業としての歴史は古いといえます。しかも、生産設備を必要とする産業ですから、相応の資本が不可欠です。歴史や資本の重みが産業としての安定感を生み出し、それが価格に対する信頼を支えているように思います。しかも、業界全体として合理化・省力化に努め、必要な工程をムダなくこなし、品質の確かな製品を生み出していることを、消費者は経験的に理解しています。こうした産業としての成熟度への認識も、価格に対する信頼を支えていると考えられます。しかし、住宅業界はどうでしょうか。住宅をつくる技術は木造であれば古くからありますし、技術を受け継いできた職人も古くから存在していますが、それらが産業化したのは高度経済成長期です。まだ半世紀ほどの歴史しか持っていないわけです。

 

しかも、業界の構成は全国区の住宅メーカーから地域の工務店まで多岐にわたります。大手の住宅メーカーであれば相応の資本力を備えていますが、小さな工務店であればそれは知れています。注文住宅をつくる仕事は共通でも、大きな格差が見られます。それらは、経営感覚の差として表れています。地域の工務店は住宅メーカーに比べて、経営感覚にまだまだ立ち遅れが見られます。たとえ優れた技術を持つ職人集団だったとしても、それがすなわち、経営感覚に優れた工務店であるとは限りません。

 

工務店は本来、家づくりのパートナーとして最適のはずです。地域に根差しているだけに、地域特性を考慮した家づくりや、敷地周辺の治安の良し悪し、敷地周りの日当たりや風通し、敷地の地盤の良し悪し……、というように、家づくりに欠かせない情報を持っています。地域で長年にわたって仕事を続けてきたということは、建築主の信頼を損ねるようなことがなかったということの裏返しでもあります。地域経済の観点からも工務店への依頼は好ましいといえます。ところが、現実はどうでしょうか。建築主にとって身近な存在でありながら、何となく敬遠されたり、知名度の高い住宅会社に顧客を奪われたりしているのが実情です。それは、一つにはやはり、経営感覚に立ち遅れがあるからです。どんぶり勘定という言葉に象徴される、立ち遅れた経営感覚にこそ、課題が潜んでいるのです。

 

 

「下請け構造」「丸投げ構造」

住宅業界の丸投げ問題

 

ここではっきりと断言しましょう。下請け、孫請け構造が手抜き工事につながるのです。手抜き工事が横行する理由は、もう1つあります。ゼネコンやハウスメーカーなどの建設業者は、直工事部門(職人)を社員として抱えていないことが多く、ほとんどの場合、家をつくるのは下請けの工務店などです。つまり、あなたが契約を結ぶ業者と、実際にほとんどの仕事をする業者とは異なるということです。元請けがあり、そこから下請け、孫請け、さらにひ孫請け……というように、一軒の家が建つまでには多くの業者が介在しているのです。介在する業者がたくさんあるということは、それぞれが利益を追求するため、当然末端の業者が多くなるのです。

 

すなわち、仕事量がたくさんある時代でしたら、下請けだって極端に安い仕事は請け負わないのですが、今は仕事があるだけでもまだマシ、という厳しい時代です。どんなに安くても、支払い条件が悪くても、仕事がほしい工務店や職人はいくらでも請け負ってしまいます。通常の価格よりもはるかに低い単価で仕事をしなければならない下請け工務店や職人が、クオリティの高い仕事をできるはずがありません。それどころか、設計図面をはじめとする書類はまともに揃えず、建設工事はあちこち手抜きばかり、建設工事を監理・コントロールするために不可欠な工事管理者(現場監督)が不在というケースも多々あります。こうした業界の実態が、欠陥住宅を招く大きな要因となっているのです。

 

 

丸投げでないかをチェックしよう

上記以外にも、欠陥住宅を生む建設業界の悪しき習慣はあります。丸投げという構図です。工事を請け負った建設業者が、いくつかの下請け業者に工事を分担させて外注し、各業者の仕事を監理・コントロールして工事を進めること自体は、別に問題ありません。業務としての外注のあるべき姿です。ところが、建設業者のなかには自分は何もせずに、工事一式を丸ごと下請け業者に任せてしまうところもあります。何か問題かというと、たとえば元請け業者が1000万円で受注したとします。元請け業者は何もしないで、下請け業者に800万円で流します。つまり、200万円は黙っていても元請けの利益になるわけです。ピンハネされた下請け業者は適正価格以下の金額で仕事を強いられるため、どこかで手抜きをします。結果、欠陥住宅になりやすいのです。「そこまでひどいのは極端な例だろう……」と思われる方もいるかもしれませんが、ハウスメーカーの多くはこのスタイルで商売をしています。自分のところは名義を貸すだけで、工事の責任はすべて下請け業者に負わせてしまいます。大手ハウスメーカーなんてクソみたいなものです。

 

なかには、契約書に堂々と「丸投げしますよ」と記されている場合もあります。しかも、どこの業者を使うのか、具体的な業者名は明記されていないのがほとんどです。契約書に「甲は乙が工事の一部または全部を第三者に請け負わせることに同意する」というような表現があったら、要注意。ロクでもない下請け業者かもしれませんから、このような場合は、断固として拒絶してください。「信頼できるところに依頼してありますからご安心ください」などという言葉でごまかそうとしたら、そんないい加減な元請け業者、「じゃあ御社には頼みませんから結構です」というぐらいの強い姿勢で臨みましょう。

 

 

利益のためなら、手抜きもする住宅業界

これこそが住宅業界の悪しき体質です。「新築で一戸建てを買ったんですが、住み始めて1年もたたないうちに家が傾いていることに気づいたんです。今じゃ、廊下を歩くとめまいがするぐらいで」「うちの場合は、雨漏りが半端じゃない。雨が降ると、寝室に滝のような雨漏りがするんです。おかげで高級羽毛ぶとんが台無しになっちゃって、もう寝室は使っていません」「わが家もひどいですよ。健康住宅を売りにした二尸建てを購入したのに、部屋のニオイがきつくてマスクをしないと気分が悪くなるんだもの」これらの声は、つくり話ではありません。わたしが実際に相談を受けたケースです。住まいの欠陥をめぐるトラブルが急増しています。わたしのところには毎日、「家が欠陥住宅かもしれないのですが……」という相談がたくさん寄せられます。メールやLINEでの相談も含めて、年間で約200件以上は受けています。また、国民生活センターによると、1年間に1994件の戸建て住宅の品質に関わる相談があったといいます(2028年度)。

 

別のページでくわしく説明しますが、欠陥住宅があまりに多いことから、平成12年4月に『住宅の品質確保の促進等に関する法律』(住宅品確法)が施行されました。これは、消費者を欠陥住宅から守ることを目的とした法律ですが、住宅品確法施行後も、住宅の欠陥によるトラブルは後を絶ちません。なぜ、欠陥住宅はなくならないのでしょうか。わたしは欠陥住宅を生む最大の原因は、建設業界の悪しき体質にあると考えています。ほかの業界と比較して、建設業界はあらゆる面で遅れています。それは、業界の慣習ともいえる土建業ならではのカンと度胸とドンブリ勘定(KDD経営)、談合、政治家や官僚との癒着など、莫大な金額を動かす業界であるがゆえの問題が山積していからです。

 

 

ハウスメーカーの建築費のカラクリ

よくハウスメーカーの営業マンは、 「工務店は小さいので、建材の仕人れ単価が高い。しかしうちは大手なので、大量に仕入れるので安くなる」といいます。しかし実際はそれほどでもなく、ほとんどの建材メーカーは、大小を問わすどの業者にも同等の金額で売っているというのが本当のところです。またたとえ違っていたとしても、それはモデルハウスや広告宣伝にかかる費用に比べれば本当に微々たるものです。ハウスメーカーは、モデルハウスや広告宣伝などにかかる費用が莫大なため、どうしても利益を高くせざるを得ないのです。

 

その点工務店はほとんど資本力がないのでモデルハウスなどつくりません。そのかわり余計な宣伝費や人件費をかけない分、建築費は安くなります。建材の入れ単価など関係ないのです。良い工務店の判断は、①地元の実績、②入居者の評価、③住宅性能保証制度への有無でできます。また建築業許可番号からも、最低限の情報が得られます。

 

 

ハウスメーカーの家は価値があるのか?

私たちが家を建てるときに考えなければならないのは、「金額以上に質の高い家」にすることです。ここで言う「質の高い家」とは、大手ハウスメーカーの家のように、必ずしも設備が多かったり高級な内装を指すのではありません。同じ会社、同じ坪数で比べた場合、金額が安い家よりも高い家のほうが品質がいいと考えられます。高級な材料を使っている、最新の設備を入れているなどが、金額の差になって出てきます。大手ハウスメーカーの家と工務店の家を比べた場合、同じ坪数であれば工務店の家のほうがずっと安く建ちます。ここには、その金額分の品質の差はありません。金額が高い分、設備が増えたり高級になったりしているのならばいいのですが、そういうわけではないのです。第4章でも触れたように、家を買うときには、まったく目に見えない広告宣伝費という会社の経費の一部を負担しています。大会社ほどこのコストの上乗せが多いのです。

 

ローコスト住宅こそバカバカしい!!

これは、ずいぶんバカバカしいことだと思いませんか?大会社の経費を、あなたが一生をかけて負担する買い物にくっつけられてはたまりません。そんな必要はどこにもないでしょう?何も、大手のハウスメーカーの家を建ててはいけないと言っているわけではないのです。あなたがもし、ブランドに価値を見出してお金に余裕があるならば構わないでしょう。しかし、先行き不透明な時代にあって、あなたが生涯安定して暮らすための家は、「安くていい家」だと私は考えます。安くていい家は、あるのです。町の工務店で建てている家です。ここ何年かの間で、さまざまな商品の価格が下がっていったのはご存知のことでしょう。しかし、世間では「住宅だけは価格が下かっていない」と言われていました。そこで、全国の工務店は、必死でコスト削減の方法を研究し、建築コストの大幅ダウンに成功したのです。もちろんコストダウンの研究だけでなく、強い家づくりについても研究を重ねてきました。

 

コスト削減といい家づくりを研究し尽くしてつくりあげた住宅、それが「ローコスト住宅」です。ローコスト住宅とは、大手ハウスメーカーが提示する価格の3分の2程度にコストを抑えた住宅のことですが、決して安かろう悪かろうというものではありません。品質や性能を確保しつつ、住宅が完成するまでの工程を合理化することによって経費や広告費を大幅に削減した住宅のことです。このようなローコスト住宅を建てられる工務店というのは、ただの工務店ではありません。建築コストの大幅な削減をして合理化に取り組んでいる工務店のことを、スーパーエ務店と呼びます。現代は、先の見えない混迷した時代です。今お勤めの会社は、あなたが定年になるまで生き残れるでしょうか。あなたは定年後、年金をちゃんともらえるでしょうか。それは誰にも分からないことです。

 

ローコスト住宅を選択することが、あなたがこれから先の見えない時代を安心して暮らしていくための必須条件となるでしょう。たとえ資金計画を上手に組み立てたとしても、あなたにとって意味のない経費が上乗せされた、高額な家を購入してしまってはお金の無駄遣いです。ゆとりある安全な資金計画の中で最高の品質の家を手に入れるため、そのような余分な金額が上乗せされていない、「安くていい家」を建てましょう。

 

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